会社が業務外で社会貢献活動をすることは実はとても複雑という話

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経緯と背景

※この記事では、不明者の捜索活動を継続しているような東北現地団体に対する支援ではなく、現地事業者に対する支援について色々と書いています。

2011年3月11日、名古屋におり震災の被害に驚愕してから1年と10ヶ月、2013年1月に私は起業した。

起業をしたら、私は、私の会社には本業とは別の使命を与えると決め、その通りに東北の支援活動を非営利事業の一環として開始し、今に至る。
当初は小さな小さな個の活動であったが、途中でGoogleが関係する復興支援団体と縁があり、東北の被災者を訪れるツアーを経験させてもらったりして、拙いながらに数個の小さな事業者に対して、主にウェブ周りのコンサル的な支援活動という立ち位置が出来た。

始めた当初は「売名行為」だとか、「株式会社が支援活動なんておかしい」とか、「起業したばかりでそんなことしている場合じゃないんじゃないの」と言われたり、もちろん感謝や応援の言葉も受けながらどうにかこうにか今も続いている。

震災から4年以上が経ち、もはや「復興支援」という枠組みでは東北を語りきれなくなり(それ自体は悪いことでは無い。自然なことだ。)、社会的関心が薄れるにつれ、当初の目的を喪失した色々な組織の「組織の維持」を目的とした活動が求心力を霧散させたりするのを見つつ、それでも依然東北は支援を必要としているところがあったりもする。と思う。(支援という言葉は解釈が多面的で難しい。例えば、どちらがより弱者であるかという切り口で見れば、加藤の会社のほうが圧倒的に弱者であることが多い。)

営利組織としての会社と従業員

ともあれ、会社ができて2年位は支援活動は、全てが成功はしなかったが、少なくとも一部においては多少の効果をもたらし、非営利で行う支援活動として一応成り立っていた。

しかし少しずつ矛盾が拡大する。

会社は従業員に給与を払わねばならない。できるだけ能力に応じた給与を。

社会貢献活動は、会社に見えざる利益をもたらすが、それは数値化し難い。従って会社単位のボランティアは利益があるという点においてボランティアとしては成り立たないが、特に小さな会社の中へ向けた正義とが共存するのは実は難しい。

会社であればある程度の事業規模になると正規にしろ非正規にしろ委託にしろ従業員ができてくる。
彼らには出来るだけふさわしい給与を渡すべきであるから、そうすると非営利の活動は矛盾を持つようになる。

端的に言うと、経営者が非営利事業を行うと従業員に渡せる給与が減る。

経営者が社会貢献をしたいのは勝手だが、それで従業員の給与が減るのはよろしくない。

正しい雇用は会社の使命なのでこれはとても難しい問題だ。

例えば経営者が2週間に1回程度仕事を休んで、日帰りで東北に行って支援活動をするとする。
往復で2万円くらいかかる。このお金は果たして事業に使わなくても良かったのだろうか。必要な備品を購入したり、従業員の慰労に充てるべきではなかったか。
或いは予算を割いて従業員に支援活動を奨励したとする。これも先と同じ疑問を持ち得る。
社会貢献は間違いなく素晴らしいことだが、職場環境の充実や従業員への給与へ予算を使うことと比べて、果たしてそれは価値が高いのか。

ボランティアからビジネスへ

感覚的には社会貢献活動は倫理的に正しいように思える。
実際に正しいと思う。
困っている人を助けるのは社会としては当然の機能だからだ。
しかし営利団体としての会社がボランティアで社会貢献を行う時には上記のような矛盾が生じる。
間接的に得られるいわゆる「名誉」や「人脈」という利益は通常のビジネスと比べると、投資に対して十分なリターンではない。

経営者がボランティアにいそしむのは勝手だが、従業員の食卓が貧しくなるようではいけない。

では社会貢献活動はやめるのかというとそうではなくて、ボランティアをやめる。
ボランティアをやめてそれをビジネスに変換していくことが有力な解決策になると考える。

災害やその他何らかの要素で打撃を受けた問題発生初期においては、通常のビジネスなど成立しないからボランティアが必要とされる。
しかし完全にではなくてもある程度それが解消したら少しずつビジネスに切り替えていくべきだと思う。
仕事上の専門スキルを活かしてサポートを行うプロボノであればそれはスムーズにビジネスの話に変換できる。
本来はお金を払ってやってもらうべきことを、ボランティアがやり続ける仕組みは継続しない。

支援先を信じるということ

無償のボランティアを切り上げて以後は徐々にビジネスに転換しましょう、というのは非常に言い出しにくい。
しかしあるべからざる無償を継続することは、支援先にとっても良い話ではない。
上述の通り本来は対価を払うべき業務を無料で依頼し続けることはできないし、ある日支援者のやむを得ぬ事情などで(例えばご家族の不幸などで)支援が急に止まることは十分にあり得る。
その時に本来のビジネスとしての体力を備えていなければその事業者は潰れる可能性がある。

以後ビジネスに移行していきましょう、という打診は、支援先が今後も社会に存在し続けるものとして、通常の形態に移行する能力を有するものだと信じることである。

東北の支援は多くの処でこのフェーズにあると感じる。
より良いビジネスに転換していくことで、経済的に自立し尊厳が宿る。

最後に一つ断っておくと、私はコンサル業でお金を得るのはあまり得意ではないので、東北の支援が終わったら支援先の事業者さんとは以後友人として付き合っていきたいと思う。あの時は大変でしたねと、10年後くらいにお酒を飲めればそれはちょっと良いかもしれない。

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