なんにもない会社 事業計画を作れない会社
僕の会社は2013年1月23日が創立日。
特に狙ったわけじゃないけど123でなんとなく覚えやすくて、しかも大安。(大安は司法書士の先生が狙ってくれた、と思う)
会社を立ち上げた時、僕にはIT業界の経験は無くて、そればかりかIT関係で収入を得たこともなくて、とにかく何も無かった。構想らしきものは持っていたつもりだけど、今にして思えばチリ紙の様に薄くてペラペラした構想だった。
事業に必要なもので僕が持っていたのは、人並みの下限程度にどうにか健康な身体と、事業を起こすには若干少ない僅かな現金と、ノートパソコン1枚。
名古屋の家電量販店で衝動買いしたNECのLavieというノートパソコンが僕の会社の全てで、暫くの間僕の会社は世の中のどこにも物理的には存在していなかった。
それでも会社というものがあるのはやっぱり嬉しかったから、その頃の僕のSNSにはノートパソコンの写真が結構多い。
展示処分品だったこのノートパソコンは、今でも事務所の僕の机の上にある。
※ちなみに何故トマトジュースを撮ったのかはよく覚えていない。多分SNSで気の利いた発信でもしようと思ったんだろう。今にして思えばそこも浅い。
※幕張の共同オフィスで、窓に向かって撮った写真。その頃は利用者が少なくて、ほぼ僕の貸し切りみたいな共同オフィスだった。
会社を建ててしばらくしてから、僕の周りにはおせっかいが増えた。
「事業構想を持つべき」だとか、「顧客を想定すべき」だとか、「収益構造を図式化すべき」とか、なんかそういう感じのおせっかいが。
今だから言うけど、僕はそれらをかなり鬱陶しく感じていた。
「何もない会社で、想像を元にキレイな計画書を作ったからといって、一体それが何なの?」
※高田馬場の10℃カフェ。ここもよく居座っていた。今でもたまに居座る。
僕はやってもいないことで空想の数字を作るよりも、その時間は実際に何かをする時間にあてたほうが良いと思っていた。
彼らからすると「その何かの成功率を上げるために計画をたてる」ということのようだったが、僕は無意味と感じていた。
僕と僕の会社はかなりたくさん失敗をした。
チームは何度も解散したし、お金もかなり消えた。
僕の会社には何もなくてノウハウもほとんど無かったから、やろうとしていることが現実的かどうかもよく分からずお金を突っ込んだりしていた。
でも僕と僕の会社は死ななかった。
週に120時間くらいパソコンに向かって(たまにサボったりもしたけど)、
散弾銃を撃つようにとにかく思いついたことで出来そうなことは色々やった。
周囲360度中の270度くらいを撃ちまくって面で押し、その中で勝てるかもしれないというところの周辺を更に撃ちまくって、気付いたら死なずに生きていた。
何もないうちに計画を立て過ぎると、失敗もしないけど、挑戦もしないのではないか。
僕の会社は僕が無謀という方向に一直線だったから生き残った。セオリー通りにやっていたら、多分ただの技術の無い零細企業だっただろう。
※色々な問題で揺れまくっていたマクドナルドだけど、100円のコーヒーと、電源と、mobilepoint(Wi-Fi)は、僕にとっては有りがたかった。今でもよく使う。
散弾銃を打ちながら幾つかのコンテンツが軌道に乗る兆しを見せ始めた頃、力は集約すべきだとか、一点突破をした方がいいとか、これまた色々な人が色々と忠告してきたけど、僕はやっぱりそれを無視して体力のある限り撃ちまくっていた。
結果論だけどそれが良かった。
「力を集約する」事自体の大切さは理解していたつもり。体力には限界があるし、どこかでスピードを上げないといけないから集約は必要だろう。
しかし早すぎる集約はギャンブルだと僕は思っていた。
僕の会社には何もなかったから、どういう能力があるのか僕にもよく分からなかった。
収益構造云々の前に、まず何が出来るのか、どのような可能性があるのかを、餓死する前に試す必要があった。
フルスイングは狙う球を決めてからの方が良い。ビジネスは野球と違って3ストライクで死なないようにすることもできるので、空振りはできるだけ多くすべきだ。
「事業計画」なんてものは、それを書いていても餓死しない強者が書くものではないか。僕の場合はそんなものは後で良かった。。それよりも自分が必死になれる領域を早く見つけるべきだった。労働を労働とみなしているうちはダメで、早く人生と同化させなければと感じていた。
自分が起業した後に改めて起業に向き合ってみると、それは誰かからアドバイスを求められることが多いのだが、皆アイデアを試すということをほとんどせずにキレイな計画を立てようとしているように思える。
ベネフィット、ユーザーエクスペリエンス、なんちゃらシー、うんちゃらかんちゃら・・・。聞いたような言葉が沢山出てくるけど、そんなものは本で読んで一応言葉だけ知っておけばいいだけで、起業家にとって必要なのは何であれまずやってみることではないかと思う。やり始めた上で成功率を上げる手を惜しみなく打つべきだろう。
なんにもなかった僕の会社は、3年経ってもやっぱりほとんど何もない。
何している会社ですか?とよく聞かれるけど「ウェブとかですね」とか言ってる。それ以上の定義はまだ難しいし、今はそれがちょっと楽しいのでしばらくこのまま「事業計画を作れない会社」で良いかと思う。
全然成功していないけど恥じるような状態でもないしね。
※ブルースクリーンでPCが死にかけた時はピンチだった。そこから蘇っていまもコイツは元気。しぶとい。
※僕は起業論とかの専門家じゃないので僕の考え方は間違っている可能性がある。これを読んで「無計画でも起業できる!」とかは思わないで欲しい。計画性を大事にする起業家も勢いを軽視しているわけではないし、実践を大事にしている起業家も準備を軽視しているわけではない。それらの差はかなり微小である。が、行動に現れた時の差が大きいという話。